大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)286号 判決
控訴人小塚岩楠、中川誠也、木幡久右衛門と被控訴人惠我村農地委員会との間の訴訟につき同控訴人等の控訴はこれを棄却する。
右控訴人参名を除く其の他の控訴人等と被控訴人惠我村農地委員会との間の訴訟につき原判決を取消し事件を大阪地方裁判所に差戻す。
控訴人等と被控訴人国との間の新訴につき、控訴人等の請求中買收計画の無効確認を求める部分はこれを棄却しその余の請求はこれを却下する。
控訴人小塚岩楠、中川誠也、木幡久右衛門と被控訴人惠我村農地委員会との間の控訴費用は同控訴人等の負担又は控訴人全部の被控訴人国に対する控訴費用は控訴人全員の各負担とする。
二、請求の趣旨
控訴人等はまず
「原判決を取消す、本件を大阪地方裁判所へ差戻す」との判決を求め、若し、その理由のないときは、被控訴人委員会に対し、
「同委員会が昭和二十二年十二月原判決末尾の目録記載の土地に対して定めた買収計画を取消す」旨及び被控訴人国に対し原審における請求の趣旨を改めて、新たに
「右買収計画の無効であること、並びに之に関する公告、異議却下決定、裁決、承認及び右買収計画以後之に基因する各行政処分の無効であることを確認する」旨の判決を求める。
三、事 実
当事者双方の事実上の陳述は控訴人等において、本件買収計画の承認のあつたことを知つたのは買収令書の交付せられた昭和二十三年七月七日で訴願裁決書は同年八月三日到達した。なお被控訴人国に対する請求について本件買収計画その他の行政処分は適法な形式要件を具備しないし無効のものである。但し無効原因の具体的事実は主張しないと述べ、被控訴人委員会において本件買収計画の承認は昭和二三年二月一日から同月九日までになされたと述べた外原判決事実摘示と同一であるから、ここに、ここれを引用すると述べた。(立証省略)
四、理 由
まず被控訴人委員会に対する本訴の適否について考えるに同委員会が(イ)控訴人柴谷静の所有にかかる原判決添附の第二物件表記載の(10)乃至(16)の農地について昭和二十二年十一月二十二日買収計画を立て、公告の上縦覧期間を同年十一月二十五日から十日間と定め縦覧に供したところ、これに対し、同控訴人は同年十二月四日異議申立をしたので同月二十三日異議却下の決定をし、同控訴人はこれに対し大阪府農地委員会に昭和二十三年一月八日訴願を申立て、同委員会は同年一月三十日訴願棄却の裁決をしその裁決書が同年八月三日同控訴人に到達したこと、(ロ)控訴人等所有にかかる農地中右(イ)の物件を除く原判決添附の第一乃至第十四物件表記載の物件については昭和二十二年十二月二十三日買収計画を樹立し、公告の上、縦覧期間を同年十二月三十日から十日間とし縦覧に供したところ、これに対し控訴人小塚、中川、木幡の三名を除くその他の控訴人等は昭和二十三年一月八日異議の申立をしたので同月十三日異議却下の決定をし、同控訴人等はこれに対し大阪府農地委員会に同年一月十八日訴願を申立て、同委員会は同年二月二十九日訴願棄却の裁決をし、その裁決書が同年八月三日同控訴人等に到達したことについては、いずれも当事者間に争がない。
しかして、買収計画に対し適法に異議の申立をした同控訴人等については自作農創設特別措置法第四七条の二第一項本文の定める一ケ月の出訴期間を原審の見解のように異議申立の日から起算することは一方に異議や訴願のなお係属しているに拘らず、重ねて訴を起すことを強制することになり当事者に対し苛酷に過ぎ条理に反する結果を来すから妥当な解釈とは認められず、却つて行政事件訴訟特例法第五条第四項の規定と同様に訴願の裁決の到達した日から起算するものと解する方が法の精神に適合するものといわねばならない。なお買収計画取消の訴が出訴期間経過によつて不適法となつた後でも同じ内容の請求を訴願裁決に対する取消の訴として適法に起することができるという原審の見解については、この二つの訴は形こそ違え結局同一の訴であつて前者の訴が出訴期間の徒過によつて、もはや起せなくなつた以上、再訴は許されないものと解するのが相当である。そうすると本訴が起されたのが昭和二十三年七月十三日であることは記録上明かであるから、控訴人小塚、中川、木幡の三名を除くその他の控訴人等については本訴は法定期間内に起された適法なものといわねばならない。
然し控訴人小塚、中川、木幡の三名は本件買収計画に対し異議申立をしなかつたのであるから同控訴人等については右買収計画樹立の日以後遅くとも昭和二十二年十二月三十日以前になされた買収計画公告の日に本件買収計画を知つたものと認められるから前記法律第四七条の二第一項本文によつて同日から一ケ月以内に訴を提起しなければならないものであつて同控訴人等は右出訴期間を経過した昭和二十三年七月十三日本訴を提起したものであるから同控訴人等の本訴は不適法といわねばならない。
従つて控訴人小塚、中川、木幡の三名については本件控訴は理由がないので民事訴訟法第三百八十四条第一項により控訴を棄却すべく、其の他の控訴人等については原審が本訴を不適法として却下したのは失当であるからこれを取消し民事訴訟法第三八八条によつて本件を原裁判所に差戻すべきものとする。
次に被控訴人国に対する控訴人等の請求について考えるに、右請求中「本件買収計画の無効確認を求める」部分については、控訴人において、その無効原因の具体的事実を主張しないのであるから、この部分の請求は理由なしとして棄却するの外はない。又「右買収計画に関する公告」は買収計画の表示行為に過ぎず独立した行政処分ではないからこれに対する無効確認請求は不適法として却下すべく、「異議却下決定及び訴願棄却の裁決」については買収計画の無効確認を求める以上これと別箇にその無効確認を求める必要は何ら認められないから確認の利益を欠くものであり「承認」についてはこれは行政庁間の内部行為であつて前同様控訴人等においてその無効確認を求める必要はないから確認の利益を欠き「右買収計画以後これに基因する各行政処分の無効確認を求める」というのは請求の目的が不特定であるから、いずれも不適法な訴としてこれを却下すべきものである。
よつて民事訴訟法第九五条第八九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 大嶋京一郎 林平八郎 大田外一)